2025.11.06 つながる
花崗岩のダイヤモンド・庵治石をリブランディング。AJI PROJECTってなに!?

『日本一高価』と言われる石が何かご存知でしょうか?香川県高松市の庵治町・牟礼町で採掘される『庵治石』は『花崗岩のダイヤモンド』とも呼ばれ、古くから高級石材として墓石などに使用されてきました。ところが、現代では墓石の需要は激減し、庵治石の産業も存続の危機に陥っています。今回は、そんな状況下で庵治石をリブランディングしようとしている石職人の物語です。
目次
花崗岩のダイヤモンド・庵治石

庵治石の産地である庵治町・牟礼町に行くと、町中の至るところに石、石、石。この町は日本の三大石材産地のひとつで、“三大”と呼ばれる地域の中でも最高級の石が採れる別格のエリアとされています。庵治石の歴史は古く、平安時代後期頃から建材として用いられ、1588年から始まる高松城の築城に使用するために本格的な採掘が始まったとのこと。高松城築城に伴い、大阪からたくさんの石職人がやってきた結果、庵治石の素晴らしさに惚れてそのまま定住したことで、日本最高の石材産地ができあがったのだそうです。
世界にも類を見ない究極の銘石

庵治石の特長のひとつは、その“硬さ”。花崗岩の中でも粒子が細かくて結合力が強く、水晶と同等レベルの硬さを持っています。さらに、水分を含みづらい性質によって風化にも強い石材です。また、石職人に話を聞くと、庵治石は「硬いのに粘土のような粘りがある」のだと言います。粘りがあるからこそ、高度な加工が可能になるのだそう。相反するように思える“硬さ”と“粘り”を併せ持つことが、庵治石の世界に類を見ない“最高級”たる所以なのかもしれません。
しかし、そのような最高品質がありながら、前述したように庵治石の産業は衰退の一途をたどっています。
庵治石を暮らしに馴染むプロダクトに。AJI PROJECT

そんなジリ貧の状況になってしまっている石材業界にまさに一石を投じ、庵治石をリブランディングしようとしている人がいます。それが、牟礼町で石材業を営む二宮さん。二宮さんが石材業で創業したのは今から30年以上前のこと。そのときから現在に至るまでのことを二宮さんはこう話します。
「32年前、墓石に文字を彫る会社として『株式会社 二宮石材』を立ち上げたんですよ。当時は庵治石の産業がとても栄えていて、庵治町・牟礼町に石材関係の事業者は500社以上ありました。それが今では150社程度。石職人の数もかなり減ってしまっています。そんな中で、衰退していく庵治石の産業をどうにかしようと、2012年に高松市牟礼庵治商工会の支援事業で『AJI PROJECT』という活動がスタートしたんです」
AJI PROJECTは、それまでほぼ墓石だけにしか使われていなかった庵治石を暮らしに馴染むプロダクトとしてリブランディングするためのプロジェクトでした。プロジェクト単体では赤字ながらも、商工会からの支援金で赤字補填する形で8年間続けてきたそうです。ですが、2020年度で商工会の支援事業は終了することに。
「AJI PROJECTには複数の石材業者が参加していましたが、商工会の支援がなくなると続けられない、という雰囲気があったんですよ。でも、これまでずっと支援してもらっていたのに、それがなくなった途端に石材業者がみんな撤退するというのが僕は恥ずかしくて。それで、AJI PROJECTを引き継ぐ形で、新しく『株式会社 蒼島』という会社を作ったんです」
分業制から生まれたスペシャリストな石職人

石材から製品を作る工程には、採掘から切削、研磨、彫刻、文字彫りなど、いくつものパートがあります。他の石の産地ではそれらを一社がまとめて行うことが多いですが、庵治石では明確に分業されており、それぞれのパートでスペシャリストの業者が存在しています。それが庵治石の職人のレベルが高い理由のひとつですが、AJI PROJECTでもそれを生かし、分業でひとつのプロダクトを作り上げているのだそうです。二宮さんは石に文字を入れるスペシャリストなので、AJI PROJECTでは製品にロゴマークを入れる工程を担当しています。
愛でたいPoint!
二宮さんは石に文字を彫る技術を生かして、なんとあの漫画『ワンピース』の公式グッズとしてポーネグリフ(作中に登場する古代文字が彫られた石)を作ったことがあるのだとか。実物を見せてもらいましたが、ワンピースファンとしては超感動…!作中ではポーネグリフを作る技術を持っているのは光月一族のみとされており、庵治石の職人がそれに匹敵すると認められたということですね!
庵治石を暮らしに取り入れてみよう!

蒼島のショールームには、そんなAJI PROJECTの製品がズラリと並んでいます。どれも、これまでの墓石のイメージとはかけ離れた、暮らしに自然に馴染むアイテムばかりです。たくさんあって紹介しきれないですが、中でも暮らしに取り入れやすいアイテムをいくつか。

まずは一番の人気アイテム『ROCK END』。庵治石の重さを生かした本立てです。自然の石を使っているので、一つひとつ形が異なっていて、すべてが一点モノ。ズッシリとした存在感がありながらも、目立ちすぎず、空間のちょうどいいアクセントになってくれるはずです。

こちらはプロダクトブランド『BP.』とのコラボアイテム『mirror』。BP.の『MAKEUP-MIRROR_SWD』の鏡の台座部分が庵治石で作られています。

スリムでシンプルな傘立て『UMBRELLA STAND』。シンプルながらも、これが玄関に置かれていれば、来客の視線を集めること間違いなし。「こんなのどこで買ったんですか?」と言われて一通り自慢するまでを来客時のルーティンにしたいですね!
究極のサスティナブル!? 端材を活用した『READY MADE』

さらに特筆すべきはAJI PROJECTの中でも『READY MADE』と呼ばれるアイテムたち。これらのアイテムは、なんと石を加工する過程で必ず出る端材(余り材)をそのまま活用した商品です。二宮さん自身も初めは「こんなものが売れるのか?」と半信半疑だったのだとか。
「こういった端材は砕石にして埋め立て用の石にするなどの活用方法はあったのですが、それほど商品価値を生めてはいませんでした。AJI PROJECTにはたくさんのディレクターやデザイナーに参加してもらっているのですが、彼らから見ると、その端材は宝の山に見えたようで。それで、よさそうな端材をいくつか選んで、オークション形式で販売会をしてみることにしたんです」

すると、多くのアイテムが売れ、高いものは8万円もの値を付けたのだと言います。READY MADEのアイテムは一つひとつが究極の一点モノで、その用途は購入者の想像力に委ねられます。アート性のあるインテリアとして活用したり、間接照明としてカスタムしたり。本来あまり価値を生まなかったものが、誰かの想像力で大きな価値を生んでいく。庵治石のお手本のようなSDGsがREADY MADEです。
まずはショールームに行ってみよう!

多くの人は暮らしのアイテムとして“石を買う”という経験がなく、本当に自分の暮らしに馴染むのか想像しづらいかと思います。そんな人は、まず高松市牟礼町にある蒼島のショールームに行ってみてください。実物を見れば、きっと“石のある暮らし”が明確にイメージできるはずですよ。
蒼島(AJI PROJECT)
*2025年11月6日時点の情報です。内容は変更となる場合がありますので、最新情報をご確認ください。


















