「糸Films 田中優一」さんが紹介してくれたのは、地域創生の聖地・徳島県神山町のおすすめスポット巡り。自然に包まれた町で、クラフトと地元グルメを楽しもう!

徳島

徳島県神山町|移住者が集う里山で自然の恵みと食を楽しむ観光プラン

かま屋の女性スタッフ

徳島市街から車でおよそ1時間。1,000m級の山々に囲まれたのどかな山里のまち、徳島県名西郡神山町は、「地方創生の聖地」として知られています。町内全戸に光ファイバーが整備され、都会と遜色ないネット環境が整っていることもあり、IT系のベンチャー企業やクリエイター、田舎暮らしを叶えたい人が集まっています。

今回は、新しい暮らしを選んだ人々が育む、神山ならではの魅力を観光情報をメインにご紹介します。

神山町のランチはレストラン「かま屋」「かまパン&ストア」で

かまパン&ストアでテイクアウトしたパンを食べる親子

2017年にオープンした「かま屋」と「かまパン&ストア」は、フードハブ・プロジェクトが運営するカフェ・レストランとパン屋、食品店を併せ持つ場所。「地産地食」をモットーに、地域で一緒に食べることで関係性を育て、神山の農業と食文化を次の世代につないでいく取り組みを行っています。

かま屋内でランチを調理するスタッフ

日本の山間地域では、農業者の高齢化や後継者不足による耕作放棄地の増加、それにともなう鳥獣被害などが大きな社会問題になっています。そんな課題を「小さいものと小さいもの、少量生産と少量消費をつなぐ」というシンプルな活動を通じてみんなで解決していこう…それが、このプロジェクトの目指す姿なのです。

かま屋|神山の素材をシンプルに味わう週替わりランチ

かま屋ランチ

フレンチをベースにしながら、あまり手を加えず、神山の季節の食材を活かしたランチを提供する「かま屋」。週替わりのメニューは、サンフランシスコ近郊の名店「シェ・パニース」で30年勤めた元ヘッドシェフのジェローム・ワーグ氏監修のもと、素材ありきで調理されています。

 かま屋で調理されるランチ

お米や野菜は、フードハブ・プロジェクトが自社農園で化学肥料や化学的合成農薬を使わずに育てたものを中心に使用。加えて、同プロジェクトを卒業した新規就農者や、農業生産グループ「里山の会」から仕入れたものを使っています。

かま屋のフレッシュドリンク

季節のフルーツや野菜を使ったデザート、フレッシュドリンクも楽しめますよ。

かまパン&ストア|神山小麦を使った自家培養酵母のパン

かまパン&ストアの内観と並ぶパン

「かまパン&ストア」では、レーズンからおこした酵母に、自家栽培の神山小麦を合わせた自家培養酵母種を使ったパンを販売。地域の野菜を使ったピザや米粉を使ったドーナツなど、基本的には神山の恵みを活かした商品ばかり。お米を挽いて米粉にするなど、素材からこだわっています。

かまパン&ストアに並ぶパンと加工品

店内では、お隣のレストラン「かま屋」で毎日使っている調味料や地域で作られた加工品、自社農園や地元農家さんの野菜も販売しています。

イートローカル事業部統括責任者の笹川大輔さん

「農業を通して食堂やパン屋、食料品店などを展開する中で、いろんな関係性づくりにつながっていると感じます」と語るのは、執行役員でイートローカル事業部統括責任者の笹川大輔さん。元々パン職人だった笹川さんは東京から神山へ移住し、「かまパン」のシェフとしても活躍しています。

かまパン&ストア「いつもの食パン」を持つ笹川大輔さん

看板商品は「いつもの食パン」。持ってみるとずっしりとした重みがあり、レーズンの酵母を使っているので少し酸味が感じられる食パンで、もっちりとした食感が特徴。「同じ食パンでも何か違うぞ、というのを感じてもらえると思います」と笹川さん。

かまパン&ストアに並ぶパン

「東京では、こういうパンを作りたいというところから逆算して素材を選んでいました。でも、こっちに来ると真逆の発想で、素材ありき。この素材があるから何ができるか、と考えるんです」

かまパン&ストアでこねられるパン

「今では神山の暮らしにどっぷり浸かって、もう東京には戻れないですね。基本的に不自由もないですし、何もないからこそ、いいものがいっぱい生まれてくる。無駄なものがないから削ぎ落とす必要がないんですよね」

かまパン&ストアで働くスタッフさん

スタッフも多くは県外からの移住者。会社全体で約50人のスタッフが神山で家族を持ち、暮らすようになり、定住人口増にも貢献しています!

かまパン&ストアの外観

その時期に採れる素材で作る。農業と食が直結している…生きる原点とも言えるごはんとパン。それが神山にあります。

かま屋/かまパン&ストア

マップでみる

「豆ちよ焙煎所」古民家改修で開いた自家焙煎コーヒー店

豆ちよ焙煎所オーナー千代田孝子さんとスタッフさんたち

徳島県神山町という山あいの町にある小さなコーヒー屋「豆ちよ焙煎所」。手回しロースターで焙煎を始め、現在は「フジローヤル3kg直火式」という焙煎機を使用し、丁寧に焙煎しています。

豆ちよ焙煎所のロースターで作業するオーナー千代田孝子さん

オーナーの千代田孝子さんは、神奈川県横浜市出身。結婚を経て自然に囲まれた暮らしに惹かれ、千葉県いすみ市などで暮らしていましたが、2011年の東日本大震災を機に、再び移住を考えるようになりました。

豆ちよ焙煎所で焙煎されるコーヒー豆

知り合いがいたのが縁で徳島に引っ越し、さらに「もっと田舎の方へ移りたい」と2012年の夏に神山町へ移住。元々Web関係の仕事をしていたこともあり、ネット環境が良かったことも後押しになったそうです。

豆ちよ焙煎所で販売しているコーヒー豆

コーヒーはずっと好きでしたが、2011年に知り合いから手回し式のロースターを譲り受けたことがきっかけで、自家焙煎するように。「難しいのと面白いので、すっかりハマってしまって…」と千代田さん。

焙煎の確認をする千代田孝子さん

徳島に移住してからはマルシェなどに出店するようになり、手回しロースターで少量ずつ丁寧に焙煎して身近な人たちにコーヒー豆を販売していましたが、「おかげさまでたくさんの問い合わせをいただくようになり、生産がなかなか間に合わなくなってきたんです」。

豆ちよ焙煎所の看板

転機となったのは、神山町の民家改修プロジェクト。テナント募集に、千代田さんは思い切って手を挙げました。「徐々に焙煎量も多くなってきたことで、よりよいコーヒーを安定して届けたいと思って」と、新たに3kgの焙煎機を導入し、2018年4月15日、古民家をリノベーションした「豆ちよ焙煎所」を開店しました。

豆ちよ焙煎所に展示されるアーティストの作品

店内は時にアーティストの展示や読書会の場にもなります。ここは、単にコーヒーを販売するだけでなく、山間の小さな町と多くの人をつなぐ、新たな拠り所でもあるのです。

ちなみに、よんでん編集部が訪れたときは、神山まるごと高専グラフィックデザインの授業で3期生が作成したポスター展が開催されていました。

豆ちよ焙煎所で販売されるコーヒー豆

ハンドドリップで淹れてくれるコーヒーは浅煎りから深煎りまで。シングルオリジンに季節のブレンド、デカフェも揃っています。

豆ちよ焙煎所のコーヒー

焙煎所では、コーヒー器具、器、コーヒーに合うお菓子、書籍やレコードの販売なども。「多くの方においしいコーヒーを」という店主の思いが詰まった空間で、ゆったりとしたひとときを過ごしくださいね。


神山町の杉から生まれる「SHIZQ」のものづくり

しずくプロジェクトの副代表・渡邉朋美さん

山や川を守るため、木製品の製造・販売など“木を使う”活動を行っている「神山しずくプロジェクト」。直営店の「SHIZQ STORE」は2025年11月より臨時休業中(再開時期未定、公式WebサイトやSNSなどでお知らせ)ですが、オンラインストアでは引き続き商品の購入が可能です。店舗再開を待ちながらも知っておきたい魅力をたっぷりご紹介します。

神山町を流れる鮎喰川

「山の保水力を取り戻すには、定期的に伐採し、山肌まで光を届けることが大切です。そこで私たちは、川の水を増やしていけるように、杉材を使う方法を考えました。使い道を失った杉の新しい価値を創造し、小さな経済の歯車を作って全体の循環を作ろう。50年後の未来へ向けてアクションを起こそう。そんな思いから神山しずくプロジェクトは2013年にスタートしました」と副代表の渡邉朋美さん。

しずくプロジェクトの作品

「柔らかい杉は器にできない」「年輪に出る色の差は好まれない」…そんな杉材のイメージを覆す、しずくプロジェクトの作品たち。

しずくプロジェクトの器

加工の難しい杉材から器を作るため、地元の職人が立ち上がり、彼らの熟練の技術が集結して生まれたしずくの器。神話が息づく神山杉を、職人の技術で一つの木から丁寧に削り出します。杉の樹齢もそのままに、横縞に積み重なるデザインもしずくオリジナル。「器をきっかけに杉のこと、山や水のことを知ってほしい」…そんな思いが込められています。

神山町内に自社木工所を構え、職人の育成や新商品の開発にも取り組んでいます。

しずくプロジェクトのカップ

天然の色味を生かしたクリア仕上げの「鶴シリーズ」は、杉にしか出せないグラデーションを存分に感じられます。ずっと触れていたくなる杉ならではの質感と、シルクのような光沢が魅力です。

しずくプロジェクトの器

上質な漆仕上げの「亀シリーズ」は、重厚感がありながらもモダンな印象。手に吸い付くような肌触りと、ゴールドに輝く年輪。大切なお客様をおもてなしするときなど、ここぞ、というシーンにピッタリです。

マット仕上げに加え、さらに高級感のある艶出し「亀八シリーズ」もあります。

しずくプロジェクトのカップ

空気をたっぷり含む杉は、保温効果に優れ、おいしさが長持ちするのが特長。手に取ったときの軽さ、口当たりの柔らかさに驚くはずです!

クラフトビール「KAMIYAMA BEER」で豊かな自然と乾杯!

「KAMIYAMA BEER」の外観

大栗山のふもとにある「KAMIYAMA BEER」。オランダより神山町へ移り住んだスウィーニー・マヌスさんとあべさやかさんが、2018年に開いたブルワリーです。ペインティングされた建物が印象的ですが、これ、実は店主・あべさやかさんの作品。

「KAMIYAMA BEER」で販売されているビール

黒ビールとパブ文化の地・アイルランドで生まれ育ったマヌスさんはビールが大好き。21歳でサウンドエンジニアリングを学ぶためにオランダのアムステルダムへ移り住みました。映像の制作会社を立ち上げ、国連の仕事でヨーロッパ、アジア、ウガンダの村や南アフリカのタウンシップ(スラムエリア)、コロンビアの田舎など世界各地を旅し、「乾杯は世界をつなぐ」というビールの可能性を実体験したそう。

「KAMIYAMA BEER」の店内

あべさんはアーティスト。日本で美術を学んだのち、世界中のアーティストが集まるアムステルダムへ移住。専門は絵画、空間芸術、プロジェクトのオーガナイズ。

そんな二人がヨーロッパやアジアで製作を行う中、2013年、神山アーティスト・イン・レジデンスで滞在製作したことが神山との出会いでした。

2016年2月に神山へ移住し、「神山のエッセンスを加えたビール作りをしよう」と一念発起したのです。

「KAMIYAMA BEER」のビールを注ぐ様子

「私たちはおいしいビールを醸造することだけでなく、たくさんの人にとって何かワクワクする、楽しいことを創り出したいと思っています」と二人。

二人の好きなビールのスタイルに神山のテイストを融合させて新たな味を追求。それだけでなく、第2の故郷であるアムステルダムの遊び心あふれる文化を反映させた1杯を醸しています。

カナダ産電気制御の「Brewha BIAC」

カナダ産電気制御の「Brewha BIAC」の小さなタンクで醸造。すべてのビールが無ろ過、非加熱処理を守り、瓶や樽の中で二次発酵が行われる自然発泡のビール。神山の豊かな自然が育んだ味わいを、ぜひ堪能してみてください!

「KAMIYAMA BEER」に並ぶビール

「KAMIYAMA BEER」は、神山町の小麦や梅などの素材を活かしているのが特長。素材の組み合わせも、エチケット(ラベル)デザインも遊び心いっぱいで、選ぶのが楽しくなります。週末の営業日には、生のクラフトビールも味わえますよ!

徳島県神山町でのんびり観光のすすめ|豊かな自然と人のあたたかさ

神山町の景色

神山町が地方創生の聖地と言われる所以は、新しい暮らし方を選んだ人々が育む、温かなコミュニティがあるから。IT環境と豊かな自然…両方がそろう神山町だからこそ、多彩で魅力的な“食”“ものづくり”が生まれています。

「何もないからこそ、いいものが生まれる」…そんな笹川さんの言葉が示すように、神山町には必要なものだけが残り、新しい価値が次々と生まれる、そんな不思議な魅力を感じます。

神山町には四国霊場12番札所焼山寺があり、お遍路さんを迎える「お接待文化」が残っています。鮎喰川のせせらぎを聞きながら、そんな人々のあたたかさを感じながら、のんびりと観光してみませんか?

愛でたいPoint!

流れる時間がゆ〜ったりとしていて、しばし現実逃避な気分でした(笑)。
「かま屋」のテラス席に腰掛けて、山並みを眺めながらパンを頬張る。川のせせらぎをBGMにクラフトビールで1杯。日常に疲れた大人たちを癒やしてくれる。最高の遠足コースです♪

*2025年11月27日時点の情報です。内容は変更となる場合がありますので、最新情報をご確認ください。

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