2025.12.18 つながる
元チャットモンチー・ベーシストが改めて触れた地元徳島の魅力 ──「OLUYO」オーナー・福岡晃子さん(accobin)

ロックバンド・チャットモンチーのメンバーとして、ベースやコーラス、時にはドラムやキーボードなど、マルチな活躍で長年バンドを支えた福岡晃子さん。
現在は徳島市内にあるイベントスペース「OLUYO(おるよ)」を拠点に、ソロ名義・accobinとして音楽制作や随筆執筆、地域イベント企画など多岐にわたる活動を行っています。
長年続けたバンドの解散、結婚、出産というライフステージの変化の中で、東京から移住を決めた理由とは。
そんな福岡さんから見た、地元・徳島の魅力とは。
これまでと今、そしてこれからのお話を、じっくり聞かせてもらいました。
目次
迷った時は心の赴くままに…超スピード移住を決めた経緯とは

2005年にメジャーデビューし、数多くの人気曲をリリースしたバンド・チャットモンチーのメンバーだった福岡さん。
2018年にバンドが“完結”し活動を終了した後は、結婚・出産を経て、2020年に生活拠点を徳島県南部へと移しました。

2023年にはソロプロジェクト・accobin名義で音楽活動を再開し、現在もさまざまな活動を続けています。
そんな福岡さんの移住ストーリーは、2024年に発表した初めての随筆集『おかえり』にも詳しく記されていました。

コロナ禍真っ只中に出産し、産後の時間を狭い東京の部屋で過ごしていた福岡さん。閉塞感漂う日々の中、少しでも気分を紛らわせようと、ある日愛犬&愛猫も含めた家族5人で地元・徳島へ里帰りすることに。

ちょうどその頃は、流入者に対するコロナ由来の警戒心が高まっていた時期。
県外ナンバーの車に乗る自分たちへの視線を感じた福岡さんは、「とにかく人のいないところへ行こう」と家族で県南部の海辺の町を訪れたと言います。
徳島県内に住んでいたのはメジャーデビュー前の10代の頃まで。
そのため徳島市以外の場所のことはほぼ知らず、その町も初めて訪れた場所だったそう。

「住んでいた東京に比べ、その場所の圧倒的な解放感 に何よりも驚きました。広い海岸を気持ちよさそうに走る愛犬の姿を今でも覚えていて、こんなにうれしそうな姿は初めて見たな、とその時思ったんです」

キレイな海辺の景色と豊かな自然、穏やかで解放感あるムード。都会の窮屈な閉塞感とは、無縁の時間がそこにはありました。
「こっちにいる方が幸せかも」
海を眺めつつそう呟いた福岡さんに対し、ご家族はこう言葉を返したそうです。
「じゃあ、今から空き家を探してみようか」
思い立ったら即行動。その言葉通り、海辺を訪れた翌日には物件見学に行った福岡ファミリー。
ちょうどいいタイミングでぴったりな家が見つかり、その場ですぐに移住を決意しました。初めて訪れてから実際に移り住むまでの期間は、わずか3カ月ほど。驚きですね!
偶然ではなくすべて“縁”…徳島移住が与えた価値観の変化

こうして、出身県とはいえ今まで縁も所縁(ゆかり)もなかった地に移り住んだ福岡さん。
当然、最初は今まで住んでいた都会暮らしとの大きなギャップがありました。
「最初にびっくりしたのは早朝の町内放送です。朝7時半から爆音の放送が時々流れるんですよ。乳児期の息子がようやく寝た瞬間にそれが聞こえた時は、さすがに『うおぉい!』と思いましたね(笑)」

ですが、今ではそんな生活にもすっかり慣れたとのこと。
「こっちの朝7時半って、東京の昼ぐらいの感覚。朝4~5時には活動し始めるので、7~8時頃にご近所さんを訪問することも。住む場所が変われば、生活もがらっと変わりますよ」

加えて生活の中には、やはり田舎ならではの不便さも。
「一番困るのはインフラの不便さ、特に病院の遠さですね。息子が小児喘息を持っていたんですが、最寄りの小児科までは車で片道40~50分ほど。普通に病院に通うだけで一日仕事ですし、緊急性が高い症状の時は本当に不安でした」

それでも、今の徳島での暮らしはとても肌に合っているそう。移住後、地域で同じように子育てをする同世代のファミリーも仲良しに。
「東京では全部偶然だと思っていたものを、ここに来て全部“縁”だと思うようになりましたね」
密なご近所づきあいで「地域ぐるみの子育て」ができることを、とてもありがたく感じているそうです。

「子どもの『外に行きたい』って言葉や、ご近所さんの『今晩はお月様キレイやから、ちょっと散歩せん?』ってお誘いとか。“この瞬間にしかないイベント”や“心のままに動く行動”を、今はなるべく優先しています。
仕事や自分のことは後でもできるので、自然に触れたり誰かと過ごしたり、そういった時間をすごく大切にしていますね」
徳島のイチオシは「地元の海辺の景色」&「菓游 茜庵の淡柚」

そんな福岡さんに、特にお気に入りの徳島のモノを改めて伺ってみました!
ひとつはやはり、移住の決定打ともなった地元の海辺の景色。
「海の力ってすごいんです。毎日見ても飽きないというか。色やうねり、泳ぐ魚もひとつとして同じ瞬間がない。人もそういうふうに生きていいよな、と思わされるんです」

そしてもうひとつが、10代の頃から大好きだという徳島市内の和菓子屋さん「菓游 茜庵 」の代表銘菓「淡柚(あわゆう)」!

この味に憧れ、幼い頃は和菓子職人になりたいと思った時期もあったそう。
ミュージシャン仲間へも必ず勧める、自慢のお菓子だとうれしそうに紹介してくれました。
「OLUYO」を拠点にソロ名義・accobinとしても徳島の魅力を発信

そんな福岡さんの今の活動拠点は、学生時代を過ごした街でもある、徳島市東新町のイベントスペース「OLUYO」です。ここは元々、チャットモンチー時代に地元とのつながりを作る場にと立ち上げたお店。
バンド解散後も地域で何かできたらと思い、福岡さんがそのままオーナーとして運営を続けています。

「不定期に月1~3回ほどイベントを開催しています。ライブやトークショー、ワークショップを行ったり、ドラムレッスンや英会話教室を開催したり」

「支援学校とのチャリティーバザーや、保護犬・保護猫の譲渡会なども実施しています。地域へカルチャー・情報を発信できる場になればいいな、と思っていますね」
「OLUYO」での開催イベントは、公式WebサイトやSNSをぜひチェックしてみてください!

また福岡さん自身も、現在はソロプロジェクト・accobinとして地元徳島の魅力から着想を得た音楽を制作・発表しています。
直近で新たに始動した映像作品『Echoes of Moments』シリーズは、徳島に息づく手仕事の“音”と“目線”を見つめた姿勢から生まれたミュージックドキュメンタリーです。
【Echoes of Moments】
https://www.youtube.com/@akikofukuoka6828

20代で上京した時は「徳島には何もない、この町にはもう二度と戻らない」と思い、徳島を出ていった、と福岡さん。
ですが…今思い返せば、この町に何があるか見ようともせず勝手に決めつけていた、と当時を振り返ります。

「いざ帰ってみると、素晴らしい文化の継承や、魂の籠もったモノ・手仕事があることに改めて気づかされました。徳島の謙虚な県民性もあってか、こんなに素敵なものが見えてなかったんだ、と痛感させられることばかりです」

今は“徳島新人”として、いろんな地元の魅力をまだまだ勉強している最中だそう。
「徳島にある素敵なモノ・コト、そして何より人との“縁”に感謝しながら、自分がいいなと思う地域の魅力を今後も発信するお手伝いができたら…」

「OLUYO」は、2026年でオープンから10年を迎えます。今後の目標の一つとして、10周年はせっかくなら面白いことがしたい、と福岡さん。

重ねて自分と同じように移住を考える人々に対しては、「行ってダメならやめればいい」という目から鱗なアドバイスも。

「最初は私もそうでした。今住んでいる地域の家賃相場は、東京の頃に比べ1/5程度。例えばそこで1年間暮らしたら、往復の引越し代が払えるぐらいの差額が出るので、お金は減らさずに経験を積むことができます。
私の周りにも地方移住を何カ所か試した結果、いい場所・人に巡り合えた!という人がちらほら。まずは3年間その地の暮らしを試してみる、ぐらいの気軽な気持ちで」
と話してくれました。
愛でたいPoint!
「心のままに」を指針とする、福岡さんらしい大胆な移住アドバイスには思わずびっくり!
ですが、よくよく話を聞いてみると、「なるほどな~」と思わされる内容ばかりでした。何事もいろいろ考えるより、まず行動してみることは確かにとても大事ですもんね。
福岡さんの音楽&イベントを通して徳島の魅力を再発見しよう

都会からの移住を経た福岡さんが表現する、徳島の魅力を詰め込んだ音楽や作品。あるいは「OLUYO」で開催されるさまざまなイベント。
それらを通じて、ぜひ皆さんも徳島の魅力を再発見してみてはいかが?
きっと今まで気づかなかった、この場所ならではの面白さに改めて出会えるはずですよ。
OLUYO
*2025年12月18日時点の情報です。内容は変更となる場合がありますので、最新情報をご確認ください。
















