2026.01.08 つながる
香川という地方都市から提唱する、10代のための“大人の在るべき姿”とは──「瀬戸内サニー株式会社」代表取締役・大崎龍史さん

香川県高松市を拠点に、教育・デジタル支援に注力するスタートアップ企業「瀬戸内サニー株式会社」の代表取締役を務める大崎龍史さん。
YouTuber「瀬戸内サニー」として、香川を中心としたローカルの魅力発信や、地域の10代・学生の学びをサポートするメディア活動が評価され、2021年には「Google社が選ぶ日本の社会的YouTuber101人」にも選出されています。
大崎さんは「東京ではなく地方にこそ可能性がある」と話します。
YouTubeを通し地域の教育に関わる中で見えた、ローカルの現状や今後の課題とは。そんな大崎さんが感じる、四国、瀬戸内、そして香川の魅力とは。
地方ならではの“これまで”と“これから”を見据えた、そのユニークな活動に迫ります。
目次
都会でなく地方にこそ可能性がある──起業への道程で得た確信

今でこそ香川を拠点に活動する大崎龍史さんですが、元々の出身地は兵庫県の上郡町。
「将来の安定性を考え、教員免許は取っておくと何かと便利かも」と思い、進学先に選んだのが香川大学教育学部だったそうです。
きっかけを得た香川での学生生活

「香川に来た頃は、地元の人同士の内輪感が苦手でした。ですが、大学時代にアメリカ留学から帰国したとき、香川出身でない僕にも『おかえり』と言ってくれる人がたくさんいて。香川という土地の印象が変わったきっかけのひとつになりました」

その後も学生時代に地元を愛する人々のコミュニティ「香川県Lovers」の運営を通して、大崎さんは大勢のローカル企業経営陣や地域の人々と関わりを持つことに。
コミュニティも、多彩な活動の中で気づけば1万人以上が所属する大所帯へと成長。そこでできた縁が、香川での起業・活動に今もつながっているのだとか。
東京で気づいた地方の大きな可能性

「大学卒業後の就職は東京に行くと決めていました」と話す大崎さんですが、20代の間に香川へ戻り、何かしら地域貢献を行いたいと当時から考えていたそう。
そのためコミュニティを通してつながった人々にも、「数年後には帰って来るから、その時自分の活動をぜひ手伝ってほしい」という種蒔きを、当時からすでに行っていたと言います。

「香川だけでなく、今はどこの地方都市からも片道切符で東京に行ってしまう人が多いですよね。いつかは帰って来て、地元で就職・起業をする“両道切符”の選択肢ももっと広がればいいのに…と思うんですけど」と大崎さんは穏やかに語ります。

「東京ではベンチャー企業や大手企業のグループ会社で働き、4年ほどいろんな経験を積みました。そこで自分の原体験を元に会社を立ち上げる人たちの姿を見て“かっこいいな”と思い、僕のなかにも自然と香川で起業する選択肢が生まれたんです」

加えて東京での生活は大崎さんにとって、「資本主義の一部になってしまう感覚だった」と言います。そんな肌感から「都会にもはや可能性はない、地方にこそ可能性がある」と感じるようになったのだとか。

「都心部にはモノも人も情報も、あふれすぎている」
地方には何もないと言うけれど、主体的に何かを始めたり新しいものを生み出したりするなら、地方の“余白”や”課題”こそが、可能性に満ちていると思ったそうです。

「今でこそ東京が国の中心ですが、改めて思い返すと昔の都である奈良や京都、戦国時代や幕末維新など、過去の日本は西からいろんな歴史が動いたこともあります。 だからこそ将来的に、西日本・中四国から面白いイノベーションが起こるかも。そう思って、当初から香川・岡山での創業を考えていました」
と大崎さんは朗らかに笑いました。
学生時代からの縁をつなぎ、今は自身が学生を応援する立場に!

こうして学生時代を過ごした香川へUターンし、2018年に「瀬戸内サニー株式会社」を立ち上げた大崎さん。
YouTubeチャンネルを軸とした活動やローカルインフルエンサー支援が注目を集めがちですが、現在はメディア事業以上に教育事業へ注力する会社へと性質も変化しているそう。

「今の弊社は“ローカルメディアを窓口に持つ教育の企業”という感じ。YouTubeチャンネルでは香川県内ほか各地のさまざまな学校情報を発信する“高校調査動画”や、

現役学生のリアルな価値観を発信する“就職進路調査動画”を通じ、令和の学生を取り巻く学校環境や教育現場の現状・課題を拾い上げています。動画は10代だけでなく、子どもの進路などに悩む親御さんの視聴も多いみたいですよ」

現役学生の現場感ある声を拾い、それを活かした教育現場・社会環境の改善・発展のためには、当然10代の生活を取り巻く地元企業や団体との連携が必要不可欠。
学生時代に培った団体運営スキルや大勢の人々との縁を、そこで存分に発揮していると大崎さんは語ります。

これまでにも香川県知事とのYouTube対談を行ったり、行政や自治体と協働した社会的プロジェクトを推進したり。文部科学省から「アントレプレナーシップ推進大使」に任命されました。YouTubeへ動画投稿している夢や目標を持つ学生の海外留学支援も、現在注力している事業のひとつ。
それらの実績が、地域の発展・起業家教育を牽引する存在としての期待にもつながっています。

現在、YouTubeチャンネル登録者数は2万人目前、瀬戸内サニーとして抱えるSNS総フォロワー数は、なんと約10万人!
自社で取り組む教育事業・社会活動に加え、その発信力もまた会社の大きな強みとなっているのです。

「メディア×教育だからこそ、自社の見せ方を工夫できた。自分たちや香川の教育を、どう他者に見せるか。その発想が今の瀬戸内サニーの知名度にもつながっている」と話します。

そのなかで会社や大崎さん自身の転換点になったのは「2018年の西日本豪雨」だそう。
「復興支援動画の制作や現地でのボランティア活動を通し、瀬戸内・四国の各地を行き来した経験が自分の視野を広げる一助にもなりました。災害復興だけでなく、何事も広い地域で見た方が同志や仲間も見つけやすいな、と。そこからより一層、幅広いエリアや多彩な分野の方とのつながりを意識し始めた気がします」

またそんな自身の活動方針が地元に受け入れられる理由のひとつには、香川の地域柄もある気がする、とも。
「香川って県内に権威の偏りがないというか。どこかのエリアが威張るわけでなく、中央は高松、東は東かがわ、西は三豊、などとそれぞれ独立国家的に地域の風土を確立しています。まとまりがないとも捉えられますが、中央集権がなく多様性がそれぞれ共存している、とも言えますね」と笑いながら教えてくれました。
地方だからこそ10代に与えられる「ヤバいものと出会う体験」を

そんな大崎さんだからこそ、今後の日本を背負う学生・10代に対する“大人の在るべき姿”には、さまざまな課題感を抱えているようです。
「僕自身も、“地域をどう見るか”というアジェンダ設定がまだ若者に対して充分できていない。世の中をどう見たらいいか教えてくれる先生がいない、と言う方が分かりやすいでしょうか」

「日本の人口減少は進むし、地方の衰退は今後も間違いなく止まらない。それでも本気で地域から社会を変え、奮い立たせるような課題設定を行うべきなんです。その力が弱いから皆あまり危機感を持たず、地方はじわじわ消滅に向かっていく。だからこそ大人がもっとちゃんと課題を設定し、少なくとも地域のいい課題と出会うような教育をすべきなんですよね」

そのために必要なのは「ヤバいものと出会う体験」だと熱弁する大崎さん。
「幕末の文明開化は、黒船という革新的な存在が大きな起爆剤だったのと同じです。今の10代はネットでなんでも情報が手に入るぶん、賢い子も多い。そんな子たちにもっと人生が変わるような衝撃的な体験や、圧倒的な存在と出会ってほしい。それを香川のような地方からでも、大人が生み出さないといけない」

またそのために「大人も、もっともがいていい」と大崎さんは話します。
「30代を迎えると、結婚し家庭を持つ=幸せという価値観が地方ほどまだまだ強い。それもひとつの幸せだけど、自分の人生でいろんなことに挑戦し続ける姿を、もっと子どもたちに見せる大人が増えてもいい」

「自分も先日、携わっていた『BLAST SETOUCHI』というカンファレンスイベントがひと段落して今は階段の踊り場にいるような気分です。次はどの階段を登ろうかな、って(笑)」
「先ほどお話した“ヤバいものと出会う体験”、こんなヤバい物を四国でも作れるんだ、こんなヤバいことを四国でも起こせるんだ、という体験を、必要とする子に届ける存在で居続けたい。子どもが憧れるかっこいい大人で在りたいですね」と今後のビジョンを教えてくれました。

愛でたいPoint!
「子どもが憧れるかっこいい大人で在りたい」という言葉に、大崎さんのすべてが詰まっている気がしました。
大人の大変さではなく楽しさを、もっと10代にダイレクトに伝える。
それこそが今の子たちに対して、大人が本来背負うべき重要な役割なのかもしれません。
「大人であること」を楽しみ挑戦を忘れない、そんな大人になりたい人へ

東京や大阪などの都心部でなく、香川というローカルにこそ可能性がある。
地方にある余白や課題へ積極的に向き合う大人の姿こそが、今の子たちに必要なもの。
教育・メディア事業を通して誰よりもそれを体現する大崎さんは、まさに燦燦と輝く太陽のようなエネルギッシュさを持っていました。そんな大崎さんの言葉や姿に、ぜひあなたも何かへ挑戦する勇気をもらってみてください。
*2026年1月8日時点の情報です。内容は変更となる場合がありますので、最新情報をご確認ください。


















