2026.02.12 つながる
いいコーヒーは、人をつなぐ。徳島で出会う浅煎りコーヒーの縁 ──トーコーヒー西谷里歩さん・森田海斗さんご夫妻

徳島市のあちこちを歩いていると、どこからともなく深く甘いコーヒーの香りが…。
実は徳島市はコーヒー好きが多く、自家焙煎の喫茶店が古くから軒を連ねている街なんです。そんな徳島で、「浅煎り」といえば名が挙がるロースタリーカフェ「トーコーヒー」を訪ねました。
焙煎担当の夫・森田海斗さんと、コーヒーを淹れる妻・西谷里歩さん。それぞれの一杯への向き合い方、徳島への想いとは…?
目次
一杯の浅煎りコーヒーが見せた、新しい世界

浅煎りで豆の個性を引き出し、長く続く甘い余韻を楽しめる後味が特徴のトーコーヒー。ほどよい広さの店内には、どの位置からもコーヒーを淹れる姿を見ることができるカウンターとベンチ、テーブルが2つ。

西谷さんがコーヒーと出会ったのは大学生の頃。徳島駅前にある老舗喫茶店「可否庵(こーひーあん)」で浅煎りのコーヒーを飲み、衝撃を受けたのが始まりでした。意外にも当時、ブラックコーヒーが飲めなかったそう。
「こんな味わいがあるのかと、ハマってしまいました。マスターのコーヒーは浅煎りが特徴で、赤みがかった色、苦み以外の魅力に出会って、コーヒーの固定概念が崩れたという感じ」
と西谷さん。夫の森田さんとのご縁も、このお店が繋いでくれたのだとか。

その後、焙煎をしていた森田さんとともに週末限定・間借りコーヒースタンド営業を経て、現在のトーコーヒーをオープン。
可否庵は、お店を持った今でも頻繁にマスターに会いに通うほど、お二人にとってのサードプレイスになっているそうです。
お店には、ささやかなこだわりを散りばめて

トーコーヒーのこだわりは、コーヒー以外にも広がります。大谷焼のオリジナルカップもその一つ。
香りをより感じられるよう、飲み口に向かって少し狭い山型の形。取っ手がなく両手で添えるように持つのは、手のひらでぬくもりを感じてほしいから。落ち着いた色合いは、コーヒーの持つ雰囲気や色味の違いを感じられるように。

「味だけでなく、香りやその温度まで五感で感じることも、コーヒーを味わう一部」と森田さんは言います。

コーヒースタンドには珍しく、飲み比べができるのもトーコーヒーのこだわり。味わいはもちろん、よーく見てみると、色味も違うのがわかります。

スイーツを担当するのは西谷さん。毎回、試行錯誤で作っている…というお話が信じられないほど、おいしそう。

この日は生チョコタルトやキャラメルリンゴのタルト、徳島県産の米粉を使った自家製あんこのあんバターどら焼きなど、コーヒーの味わいとぴったりな予感しかしないラインナップ!
いずれもコーヒーとの相性を考えて甘さ控えめ。コーヒーを頼む人のほとんどがお菓子をオーダーするというのも納得です。

オーダーごとに豆を挽き、ハンドドリップしていく「トーコーヒー」の一杯。豆の挽き具合、その淹れ方、妥協のない一杯のためには、提供にどうしても時間がかかります。
「“少し待ってでも、この一杯を飲めて良かった”そう思ってもらえたら…」
「コーヒーの魅力は、味はもちろんのこと、コーヒーと過ごす時間も」と言う西谷さん。
その言葉の通り、店内は自然とお客さんと(時にはお客さん同士でも)コーヒーの会話が生まれる、いい時間が流れています。

ちょうどお店に訪れた大学生の常連さんも、コーヒーを注文して淹れてもらう間にぽつりぽつりと近況やコーヒーのおいしさについて話し、できあがった一杯をゆっくり味わってから、また次の場所へと出発。

ところで、店名の綴りは読みの通りだと「TO COFFEE」ですが、看板表記は「COFFEE TO」。気になって「トーコーヒー」の名前の由来を訊ねてみると、「TOにはand“〜と”の意味と、to“届ける”の意味もあるので、それを伝えるため後ろにつけました」とのこと。

店内では、小さなオーナー・愛娘の和暖(わのん)ちゃんがお散歩中。お客さんも一緒に成長を楽しみにしてくれているとか。自然体でおおらかなご夫妻の人柄が店内に垣間見えるのも、「トーコーヒー」の魅力です。
一杯のコーヒーには“細かな配慮と想い”が詰まっている

トーコーヒーで焙煎を担当する森田さんも、大学時代からコーヒーの魅力のトリコになった一人。自分の好みで選んだコーヒーを飲むためにと始めた焙煎ですが、続けるうちに自分で豆を選ぶ楽しさ、自分の好きな味を求め、どうやったら美味しく焼けるのか?とのめり込んでいったのだとか。

「焼きたい豆を見つけることが、自然とお店の味にもなっています」と森田さん。

コーヒーの焙煎度合いそのものは時間×熱量である程度は決まるけれど、焙煎による「味わい作り」は奥が深いと言います。
焙煎の温度や時間をパソコンで細かく確認しながら、火加減などの小さな調節、その変化を確認する作業は、1秒たりとも気が抜けません。

焙煎は時折モニターで確認しながら調整を加えます。前回のデータやカッピング結果をもとにどう味わいを作るかを考えながら、焙煎していきます。

今日の豆の状態はどうかな、と調子を見ながら、細かな調節を行っていく。
提供する側も、飲む側も。日々の小さな変化に気づいたり、その変化について対話したりすることも、コーヒーの楽しみなのかもしれません。
全国から、徳島へ。コーヒーでつながる新たな縁

2025年、徳島初のスペシャルティコーヒーフェス「TOKUSHIMA COFFEE CULTIVATE」を立ちあげたトーコーヒーのお二人。徳島駅前のしんまちボードウォークで開催されたこのイベントは、北は宮城、南は沖縄まで、名だたるロースタリーが出店しました。

全国各地のスペシャルティコーヒーが徳島に集まるというイベントとあって、県内外から多くのコーヒーファンが足を運び、大盛況を収めました。
ご夫妻がTOKUSHIMA COFFEE CULTIVATEを開催するにあたり多大な協力を受けたのが、株式会社SYU・HA・RIの辻本さん。全国のロースターさんとも丁寧に関係を築いている方で、今回のイベント開催についても深く関わり、支えてくださったと言います。辻本さんは、トーコーヒーと、全国のロースターさん、ひいては特別な一杯を求め訪れるコーヒーファンとを繋ぐ、かけがえのない存在なのです。
「スペシャルティコーヒーは、この一杯がどんな環境で育った豆で、どんな過程を経てここまで届いているかがわかることが基本。生産者の思いもきちんと届けてくれる、そして何より選ばれるコーヒーが美味しいこと。辻本さんが選ぶ豆なら信頼できる、と思っているからこそお願いできています」と森田さんと西谷さんは口を揃えます。

美味しい一杯を届けたいという思いも、味に出る。人の誠実さが品質につながる。「コーヒーは人である」という言葉の理由は、ここにあるのかもしれません。
トーコーヒーにとって、徳島のコーヒーカルチャーとは?

「徳島は四国の中でも、流行などからは遅れた地域で、どちらかというとネガティブな印象が強かった」 と西谷さん。
しかし、地方であるからこそ、新しいことをやってみる楽しさがあると気づいたと言います。

「TOKUSHIMA COFFEE CULTIVATEのコーヒーチケットは1セット4枚のうち、1枚は徳島の出店者のみ利用可能なものにしました。全国のコーヒーを味わってもらい、その中で徳島のコーヒーを飲んでもらう機会を作り、徳島のコーヒーカルチャーを発展させたいという思いがありました」

「コーヒーは日常にあるものだからこそ、地元のコーヒー屋さんの良さをもっと知ってほしい、お客さんにも日常を彩る時間を、新たに見つけてほしいと思ったからです」

“コーヒーといえば深煎り”という徳島コーヒーカルチャーの中で、「トーコーヒー」は徳島らしいかと言われると、そうではない。でも、個性豊かなスペシャルティコーヒーが飲める店であると、多くの人に知ってほしい。
「仕事終わりや休憩中、ちょっとOFFするタイミングだったり、頑張ろうと気合をいれるきっかけだったり、 今日の気分で選ぶお店の一つとして来てもらえたら。来てくれた人には身体に馴染み、心に沁みる美味しい一杯を届けられる、そんな存在になりたいです」

コーヒーを頼んで飲み切るまでのゆったりとしたひととき。このお店に来る人たちは皆さん、日々のひと息をつく隙間を、コーヒーの香りで埋めているようにも見えました。
おいしいコーヒーがある街は、いい街になる。そんなトーコーヒーの想いは香りにのって、今日も徳島に広がっています。
愛でたいPoint!
徳島市内を歩くと、本当に自家焙煎のお店がたくさん!古き良き喫茶店の風情と、新しい一杯を求めるスタンドは相反するようにも見えますが、互いを認め合うあたたかさがあるのが徳島のコーヒーカルチャーのいいところだと感じました。浅煎り、深煎り、それぞれ淹れる人の想いを垣間見るような一杯を、ぜひ楽しんでみてください!
トーコーヒー
- 徳島県徳島市城東町1丁目1-12 金子ビル102
- なし
- https://coffeeto.stores.jp/
- https://www.instagram.com/tocoffeeto/
- https://www.facebook.com/coffeeto2
*2026年2月12日時点の情報です。内容は変更となる場合がありますので、最新情報をご確認ください。
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