
STORY
瀬戸内海に浮かぶミカンの島・大三島で育つ“みんなのワイン”/大三島みんなのワイナリー

瀬戸内海で隔てられた愛媛県と広島県を結ぶ海上道路『しまなみ海道』。その中間地点に愛媛県最大の島である『大三島(おおみしま)』があります。しまなみ海道が開通する以前は“離島”だった大三島ですが、今では車で気軽に行ける、観光客にも人気の島です。そんな大三島は、柑橘類の栽培に適した気候風土があり、古くからミカンの一大産地として知られてきました。しかし、農業の後継者不足はご多分に漏れず、耕作放棄されたミカン畑が多くなってきていたようです。そんな中、ミカン畑をブドウ畑に変え、大三島産のワインを造っている人たちがいます。
大三島みんなのワイナリー

2015年、大三島に設立された『大三島みんなのワイナリー』。建築家である伊東豊雄さんの建築ミュージアムが大三島に開館したことをきっかけに、同氏が設立したワイナリーです。上の写真の二人はワイナリー設立当初から働いている川田さんご夫妻。そんなお二人にワイナリー設立当時のお話を伺いました。
「実は、伊東も私たちも大三島に縁もゆかりもなかったんですよ。でも、建築ミュージアムの開館をきっかけに伊東が大三島に興味を持って、『島の活性化に繋がる取り組みを何かやりたい』と考えるようになったそうなんです。伊東自身がワイン好きだったこともあり、ミカン畑の耕作放棄地でブドウを育てて、大三島産のワインを造ろう、というプロジェクトが始まりました」

正確に言うと、ワイン造りプロジェクトの発端は、現在、栽培と醸造の責任者を務める川田さんの提案だったのだそうです。
「僕は以前に山梨大学のワインコースに通っていて、元々、卒業後には自分でワイナリーを立ち上げたいと思っていたんですよ。出身地が海の近くだったので、ワイン造りも同様の場所でやるのがいいなと思っていましたが、太平洋側も日本海側も降雨量が多くて風も強いのでブドウの栽培には向かないんですよね。そう考えていたときに、以前より交流があった伊東が大三島に建築ミュージアムを開館するということで、僕も大三島に行く機会ができて。気候風土はブドウ栽培に向いていたし、当時から大三島ではミカン畑の耕作放棄地が問題になっていたのもあって、『瀬戸内って地中海のイメージに近いし、ミカン畑をブドウに植え替えてワインを造ってみたら面白いのでは?』という話になったんです」
そういった話から、伊東さんは大三島にワイナリーを設立することになったのだといいます。地元の方に畑を借りることもでき、佑輔さんは大三島に移住し、ワイン造りプロジェクトがスタートすることになりました。
ブドウ栽培に適した大三島の気候風土と海の近くの醸造所

大三島の土壌は、水はけの良い真砂土で、ブドウ栽培にはとても適しているそうです。また、年間を通して降雨量が少なく、夏に晴れ間が続く瀬戸内の気候もブドウにとっては最高の環境。さらに、ミカンに適した南向きの緩傾斜の畑はブドウにとっても適しているようで、実は大三島はブドウの名産地になりうるポテンシャルを秘めていたのです。地元の農家さんとも契約し、今では島内27箇所の畑でブドウを栽培して醸造している、まさに大三島の“みんなのワイン”。

そんなワインの醸造所は大三島最南部の海沿いにあります。この醸造所が海の近くだからなのか、そもそもブドウ畑が海の近くだからなのか、大三島産のワインには独自の味わいがあるといいます。
海とミカンの風味を感じる大三島のワイン

川田さんは大三島のワインの味わいについて、こう話します。
「大三島のワインは、味わいに海の塩味がのっているのが特徴のひとつです。潮風の影響なのか、ブドウ栽培の土壌に海のミネラルが含まれているからなのか、その要因は分からないのですが、特にシャルドネの白ワインにはその特徴が強く出ています。それと、お客様には『ワインにほんのりミカンの香りがのっている』とよく言われるんですよ。それもなぜなのかは分からないのですが、そういった独特な風味が大三島産ワインの良いところですね。」
ワインの直売所『大三島みんなの家』

『大三島みんなのワイナリー』のワインは島内にある道の駅でも一部の種類を購入することができますが、やっぱりおすすめは直売所です。島内の西岸・大山祇神社参道にある『大三島みんなの家』では、購入前にその場で試し飲みができる『飲み比べセット』も販売しています。

飲み比べセットは、グラスワインが2杯とおつまみが付いたお得なセットです。現地に訪れたら、まずこれを注文してみてください。

ワインの他に、大三島の元々の名産品であるミカンやイチゴを使った果実酒も販売されていました。こちらもワインと同じ醸造所で造られているそうです。ワインもいいですが、これも美味しそう…!

たまらずお土産用に『島みかんスパークリング』をゲットして、帰宅後にいただきました!こちらの仕込みに使った2023年のミカンはとても糖度が高くできた年だったようで、ビターな味わいながら甘みもしっかり感じる果実酒でした。個人的に、すごくオススメです。

直売所では、島内で獲れた猪肉を使った『大三島イノシシレモン鍋セット』も販売されています。海の塩味がある大三島産のワインに相性抜群だそうです。
また、大三島内のいくつかの飲食店では『大三島みんなのワイナリー』のワインが提供されているそうなので、どんな料理に合うか、そこで試してみるのもいいですね!ワイン好きな方は、ぜひ大三島のワイン旅に出かけてみてください。きっと、素敵なワインに出会えるはずです。
大三島みんなの家
大三島内で『大三島みんなのワイナリー』のワインを提供している飲食店
しまなみフレンチ Filer
- 愛媛県今治市上浦町甘崎1572
- 0897-87-2344
- https://shimanami-filer.com/
WAKKA
- 愛媛県今治市上浦町井口6691-1
- 0897-72-8705
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