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香川県産のスペシャルティコーヒー、爆誕!?/海辺の珈琲研究所 -豆豆豆-

珈琲豆の産地といえば、ブラジルやコロンビアなど、南米のイメージがありますよね?でも、日本国内にも少数ですが珈琲農園がいくつかあって、それぞれが独自の“ご当地珈琲”を作っています。そして、そんな珈琲農園が香川県三豊市にもひとつ。
珈琲を愛する紳士淑女の皆さまへ。今回は、香川県のスペシャルティコーヒーのお話です。
目次
海辺の珈琲研究所 -豆豆豆-

やってきたのは、香川県三豊市、“日本のウユニ塩湖”として有名な『父母ヶ浜(ちちぶがはま)』の海岸沿い。父母ヶ浜を一望できる抜群のロケーションに、新しい大きな建物があります。一見すると、お店のような、お店じゃないような…。
こちらの施設名は『海辺の珈琲研究所 -豆豆豆-』。豆豆豆と書いて『ズズズ』と読むそうです。うーん、施設名を見ても、ここが店舗なのかどうか確証が持てません。

中に入ると、海側のスペースはカフェになっていました。客席はほぼ窓側のカウンターのみで、カフェというよりはコーヒースタンドという感じでしょうか。テイクアウトも可能ですが、どの席も父母ヶ浜の絶景が見渡せる特等席なので、店内でゆっくりしていきたいところです。
ハンドドリップのスペシャルティコーヒー

『海辺の珈琲研究所』という名前の通り、豆豆豆は珈琲がメインのお店。ハンドドリップで淹れるスペシャルティコーヒーを求めて、国内外から珈琲ファンが訪れる場所です。ハンドドリップの珈琲は、いわゆる“ブレンド”ではなく、産地や豆の品種ごとにしっかり管理されたスペシャルティで、その種類も豊富。この日はなんと16種類もの珈琲が提供されていました。

あくまで珈琲がメインのお店なので、ランチなどの食事メニューはなく、ドリンク以外にあるのは何種類かの手作りスイーツと自家製パンのモーニングのみ。純粋に珈琲を楽しみたい人にはうってつけのお店です。
丘の上の珈琲農園・TKG Ricoファーム

そんな豆豆豆には、なんと自社の珈琲農園があるそうで、特別に見せてもらいました。豆豆豆から数キロ離れた丘の上にある『TKG Ricoファーム』。珈琲豆というのは、普通は日本で栽培できるものではなく、世界に流通する珈琲豆のほとんどが、赤道の南北緯25度の間の『コーヒーベルト』と呼ばれる熱帯・亜熱帯地域で収穫されています。

この『TKG Ricoファーム』は香川県三豊市にあるわけですが、農園内にはいくつもの立派な珈琲の木が並び、真っ赤な珈琲チェリーがたくさん実っていました。日本での珈琲栽培は緯度的に「沖縄でギリギリ」だと言われており、本来ならこんな場所で珈琲の実ができるはずがないのですが…。
不可能と言われた香川での珈琲栽培

そんな“できるはずのない”珈琲栽培に6年前から挑戦しているのが、豆豆豆のオーナーでもある株式会社TKG Ricoの筒井さん。元々は製造業を営んでおり、その分野で成功を収められた方ですが、娘さんが生まれたことをきっかけに、いずれ娘さんに引き継げる事業として農業の分野に進出したのだそう。アボカドなど様々な作物に取り組んでいますが、その中でも主たる作物として珈琲を選んだ理由を筒井さんはこう話します。
「ワインやウイスキーなど、農作物を原料にした飲み物はたくさんありますが、実はそれらは世界規模でみると飲まれている地域が限られているんですよ。でも、珈琲は世界中で楽しまれています。だから、ここ香川で珈琲を作りたい、と思って栽培を始めました。当時は農業の専門家の方々からいろいろ言われましたね。『不可能だ』とか『酔狂だ』とか。たしかに専門家の目からみれば香川で珈琲を栽培するというのは無茶なことなのかもしれません。でも、私は農業経験のない初心者だったのでね。無理だという先入観がなかったんですよ」

もちろん、最初はかなり苦戦されたようで、何度も珈琲の木を枯らしては栽培環境を改善するトライアンドエラーの日々だったそうです。しかも、筒井さんは数ある珈琲品種の中から最も栽培が難しいものを選んだのだとか。
「植えたのは、珈琲のニューヨーク市場でスペシャルティとされているアラビカ種のティピカです。ティピカは原産国では標高2000m以上の高地で育つ珈琲で、栽培のハードルが一番高い品種なんですよ。でも、それがもう収穫できるところまできています」

農園では真っ赤な実、いわゆるチェリーが収穫できるわけですが、そのチェリーの中にある生豆を発酵する施設もすでに用意されています。自社で生豆の発酵を行うのも筒井さんのこだわりのひとつです。
「外国から輸入される珈琲豆はすべて発酵済みのものなんですよ。新鮮なチェリーの状態では入ってこなくて。でも、日本は発酵技術の国ですよね。特に香川は醤油や味噌などの生産が多く、高い発酵技術を持っている県です。珈琲の味は発酵の段階で7割決まると言われています。だからこそ、珈琲豆を栽培して、発酵も自社で行うことに価値があるんです」
香川県産スペシャルティコーヒーが飲めるようになるまで、あと2年?

そしてもちろん焙煎の設備も整っています。焙煎室は最初にご紹介した豆豆豆の店内にあって、たくさんの機械がズラリ。つまり、珈琲豆の栽培から発酵、焙煎まですべて自社で行い、試行錯誤しながら香川県産のスペシャルティコーヒーを作っていっているのです。最初は『海辺の珈琲研究所 -豆豆豆-』という名前のお店かと思いましたが、ここは文字通り、珈琲の研究所だったというわけ。
そして、この香川県産スペシャルティコーヒーが店頭で飲めるのか、という話ですが、残念ながら、現在のところ(2025年6月26日時点)まだ店頭で提供はされていません。というわけで、いつ飲めるようになるのか、最後に筒井さんにその展望を聞いてみました。
「納得がいく珈琲ができたら、まずは世界の品評会に出したいと思っています。そこで賞をいただいて、世界に認められた珈琲ブランドを生み出すのが当面の目標です。そうなれば、豆豆豆の店頭でも提供させていただきます。予定では2〜3年後というところです」
ちなみに、そのスペシャルティコーヒーの名前は決まっていて、『Rico珈琲』というそうです(実は『Rico』というのは筒井さんの娘さんの名前)。今はまだ『Rico珈琲』は飲めませんが、それでも豆豆豆は珈琲好きにはとってもおすすめできるお店。父母ヶ浜の観光がてら、ぜひ立ち寄ってみてください。それにしても、2〜3年後が楽しみです!
海辺の珈琲研究所 -豆豆豆-
- 香川県三豊市仁尾町仁尾乙172-1
- 0875-82-3777
- あり
- https://www.instagram.com/zuzuzu.coffee.lab/