愛でたいSTORY

今治・しまなみ海道のパン屋&ビストロ「paysan(ペイザン)」ペット可の宿も完成予定!

移住してパン屋「paysan」を開いたご夫妻

愛媛県今治市から広島県尾道市まで、瀬戸内海に浮かぶ自然豊かな6つの島々を結ぶ「しまなみ海道」。しまなみ海道・今治側のスタート地点となっている大島には、石窯で焼くおいしいパンの店「paysan(ペイザン)」があります。

本当の豊かさを求めて、この地へ移住した家族の物語。それは親から子へ、パン屋からビストロ、そしてペット可のゲストハウスへ。家族が増え、3世代になった今も続いています。

今治大島で18年以上続く「パン屋 paysan(ペイザン)」

今治大島「亀老山展望公園」から見たしまなみ海道
【今治大島随一の風光明媚なスポット「亀老山展望公園」から見たしまなみ海道】

サイクリストの聖地とうたわれるしまなみ海道。今治ICから高速に乗り、来島海峡大橋を渡っていると、自転車道にはサイクリストの姿が見えます。大島南ICを降りたら、「パン屋 paysan(ペイザン)」まではいくつか道程がありますが、おすすめは海沿いのルート。ちょっと寄り道になりますが、道の駅「よしうみいきいき館」を過ぎたら、来島海峡大橋を臨む道が現れます。

晴れた日には、フォトジェニックな絶景が広がります。車や自転車は路肩に置いて、気を付けて撮影してくださいね(取材日は雪が降っていて、残念ながら撮影できず。代わりに5月に撮影した「亀老山展望台」からの眺めを置いておきますね。こちらもおすすめです!)。

赤い看板が目印の「パン屋 paysan(ペイザン)」外観

店までのあぜ道の途中、右手にアヒルの小屋があり、かわい子ちゃんたちが迎えてくれました!そして丘を見上げると、赤い看板が目印の「パン屋 paysan(ペイザン)」が。駐車場は、その麓にあります。

かわいく並べられたベーグル

18年以上続くこのパン屋を営むのは、兵庫県から移住してきた求(もとめ)光章さん・ゆう子さんご夫妻。「paysan(ペイザン)」は、フランス語で「農夫」という意味。そこには自然と共に暮らし、安全・安心な食を届けたいという思いが込められています。

石窯で焼き上げた天然酵母のパン

天然酵母で熟成させた生地を、石窯でじっくり焼き上げるパンは、香ばしい香りと深い味わいが特長。なんと石窯は、大工経験のある光章さんの力作。「お金がなかったから」とゆう子さんは笑いますが、それにしてもスゴすぎます!

レトロな内装とパンの箱もおしゃれ

「子どもには安全・安心なものを食べさせたい」という思いから、素材も製法もできるだけ自然で安心できるものにこだわっています。そのこだわりが口コミで広がり、営業日には地元の人たちはもちろん、多くの観光客が訪れるほどの人気です。

週末限定でオープン「喫茶 paysan」ノスタルジックな手作りカフェ

「ペイザンバーガー」金~日曜日限定のこだわりメニュー

パンの販売に加え、金〜日曜日限定でオープンする「喫茶 paysan(ペイザン)」では、こだわりのメニューが楽しめます。自家製バンズに国産牛と豚のパティを挟んだ「ペイザンバーガー」や、はちみつトーストなど、天然酵母のパンを使用したメニューをゆう子さんが手作り。

レトロな店内で限定ハンバーガーをいただく

コーヒーは、フェアトレードのオーガニック生豆をパン窯で自家焙煎したもの。深みのある苦味とパン窯焙煎ならではの豊かな甘みが広がり、パンとの相性は抜群です。

「のんびりと過ごしてほしい」という思いから、店内はゆったりとした空間になっており、地元の人々や観光客が思い思いの時間を楽しんでいます。

ノスタルジックな懐かしい窓ガラスとDIYでペンキを塗った窓枠・壁

ご家族みんなでペンキを塗った味のある窓枠や壁。昔懐かしの窓ガラスがなんとも言えないノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。この日は、島のおまわりさんがペイザンバーガーをテイクアウトしていきました。

移住から四半世紀!しまなみ海道でかなえた移住の夢

「paysan(ペイザン)」入り口とオーナーご夫妻

求さん一家が今治市の大島に移住したのは、2002年のこと。関西出身の2人は、阪神淡路大震災を経験したことをきっかけに、「本当の豊かさとは何か」を考え始めたそう。

当時、自然食品を扱う小さな八百屋さんで働いていた光章さん。たくさんの生産者と関わりを深める中で、「田舎での自給自足に憧れを抱いた」と言います。

さらに、勤務先の八百屋さんで、和歌山のミカン山のてっぺんで飲食店を営む夫妻と知り合ったことも転機に。「田舎暮らしに興味があるなら来てみない?」という声に導かれ、2人はパン屋修業を始めたのです。光章さんは製パン、ゆう子さんはカフェ部門で経験を積み、家族そろっての移住計画が具体的に動き始めました。 

調理するゆう子さんの後ろ姿

求さんご夫妻が移住を決めたのは、子どもたちを健康に、のびのびと育てたいという気持ちが一番にありました。「それこそ長期休暇には車に家財道具を詰め込んで、子どもたちといろんな田舎を旅して回ったんですよ」とゆう子さん。そんな旅の途中、たどり着いたのが今治市の大島でした。

レトロな椅子とおしゃれな内装がマッチ

しまなみ海道・大島の自然、そして温かい島の人々に惹かれ、この地に移住を決意。自宅を改装してパン屋を始め、少しずつ地元に溶け込んでいきました。

「島でできた友達に手伝ってもらいながら、週に1回だけの営業から徐々に広げていきました」とゆう子さんは振り返ります。

オーナーご夫妻のセンスが光るレジカウンター

店舗も自分たちの手でどんどん進化。パンの販売はもともと花壇だったところにDIYで売り場をつくったそう。最初はデッキだったのを雨よけのために屋根を付け、「遠方から来てくださった方にお茶を出したいな」という思いから囲いを付けて…と光章さん主導で手を加えていったそうです。

求さんファミリーの移住物語はまだまだ続きます。

Bistro paysan|海の見えるレストランでランチ・スイーツも

「Bistro paysan(ビストロペイザン)」店内と長男の大地さん

「パン屋 paysan」から亀老山展望公園の方向へ向かって北へ車で約10分。島の反対側の海のすぐ近くに「Bistro paysan(ビストロ ペイザン)」があります。移住当時は幼かった求さんご夫妻の2人の息子さんも成長し、2022年には長男の大地さんが店長を務める「Bistro paysan」をオープンしました。

東京で飲食業の修業を積んだ大地さん。当初は東京に根を下ろすつもりだったと言いますが、転機はコロナ禍でした。結婚し、第一子を授かったことを機に、奥様の思いもあって「島で子育てを」とUターンを決めたそう。「外に出てみて、改めて島の豊かさを実感。自分も育ったこの島で、子どもたちをのびのびと育てたいと思いました」と話します。

地元魚介やオーガニック野菜のランチ

そんな大地さんが手がける料理は、修業先のイタリアンやメキシカンを感じさせつつ、和食の要素も織り交ぜた親しみやすい味わい。島の漁師から仕入れる旬の魚介や愛媛県産の牛肉、島野菜などを使い、安心して味わえる一皿を大切にしています。

ランチは11時〜14時ラストオーダーですが、それ以降はカフェメニューやpaysanのバンズを使ったハンバーガー、ちょい飲みセットも楽しめます。

パティシエの陽介さんが作るスイーツ

スイーツ担当は神戸でパティシエ修業を積んだ弟の陽介さん。季節の果物をふんだんに使ったスイーツプレートやアフタヌーンティーセットも好評です。

異国情緒を感じる店内はセンス抜群!両親から受け継ぐ自作スピリッツ

「Bistro paysan(ビストロペイザン)」赤い外観が目を引く

「パン屋 paysan」の看板の赤を取り入れつつ、リノベーションした「Bistro paysan」。道路から見上げると、目を引きますね!

異国情緒を感じるポップな空間

店の内装は、ご両親の「パン屋 paysan」と同様に家族総出でDIY! 瀬戸内海を望むロケーションに、赤い外壁が印象的なビストロは、どこか異国情緒を感じるポップな空間。フロアごとに雰囲気を変えています。

自然物を取り入れたおしゃれなカウンター

カウンター席に自然を取り入れたり…。

ラグジュアリーな雰囲気の和室

和室はラグジュアリーな雰囲気にしたり…。奥は押し入れを改装して、カップルにおすすめの半個室風の2人席にしています。

陽介さんもものづくりの腕前&センスが抜群で、店のメニューのデザインや壁面のイラストを手がけています。ちなみに、大地さんが着用しているスウェットも陽介さんのデザイン。「できる限り自分たちでつくる!」精神は、脈々と受け継がれています!

クラウドファンディングで挑戦!ペット可の宿づくり

DIYした赤い扉に手書きの「Open」

なんでもできることはDIY!な求さんファミリーは、さらに新たな挑戦を始めています。

「パン屋 paysan」の手前にあった耕作放棄地や空き家を譲り受けてリノベーションし、ペットフレンドリーな1棟貸しのゲストハウスをオープンするため、クラウドファンディングを実施したのです。ドッグランも併設する予定だそう。

大地さんは「大島をもっと活気付けたい」という想いから、地域に根差した取り組みにも積極的。「島に宿ができれば、滞在してじっくり楽しんでもらえる。周りのお店や人々と一緒に盛り上げていきたい」…そんな思いに島の若手メンバーが賛同し、今、地域おこしの輪が広がりつつあります。

家族でつないできた移住物語の第2章、幕開けです。

まとめ|しまなみ海道・今治大島で続くpaysan親子の移住物語

求さんファミリーとスタッフさんたちによる「チーム paysan(ペイザン)」が大集合!

自然に寄り添い、家族で営むパン屋とビストロ。そこに、2025年夏にはゲストハウスが加わる予定です。ゲストハウスでは、夕食を「Bistro paysan(ビストロ ペイザン)」で楽しみ、「パン屋 paysan(ペイザン)」のパンとコーヒーでモーニング…というプランを予定しているそう!


求さんファミリーが紡ぐ移住物語は、これからもしまなみ海道・今治市の大島で続いていきます。大島を訪れる際は、ぜひ「パン屋 paysan」と「Bistro paysan」に立ち寄ってみてください。パンの香り、コーヒーの深い味わい、家族の笑顔、そしてしまなみ海道の豊かな自然が、あなたを温かく迎えてくれるはずです。